2025年、日本そして世界が熱い視線を注ぐ大阪・関西万博。未来社会のショーケースとなるこのビッグイベントで、大胆な試みが実施されています。
それが、会場内の完全キャッシュレス化です。
現金は一切使えず、電子マネーやQRコード決済などのデジタル決済のみで、飲食からお土産購入まで、会場内のあらゆる支払いが完結する仕組み。最先端技術を駆使したスマートな体験への期待が高まる一方で、「不便すぎる」「高齢者にはハードルが高い」といった懸念の声も少なくありません。
果たして、大阪万博のキャッシュレス化は本当に成功しているのでしょうか?それとも、現場では様々な課題が噴出しているのでしょうか?実際に会場を訪れた人々のリアルな声をもとに、その実態を徹底的に深掘りします。
万博会場は完全キャッシュレス!一体何が使える?
大阪万博のゲートをくぐると、そこは現金の存在しない未来都市。財布を取り出す代わりに、スマートフォンやカードを提示する光景が広がります。利用できる主な決済手段は以下の通りです。
EXPO 2025 デジタルウォレット
専用のスマホアプリ。チャージ式で、会場内での支払いはもちろん、クーポンの取得やイベント情報との連携機能も搭載。地域連携キャッシュレスプラットフォーム「ミャクペ!」の機能も統合されており、加盟店での利用や地域連携特典も利用可能です。
クレジットカード
VISA、MasterCard、JCBをはじめとする主要ブランドに対応。
QRコード決済
PayPay、楽天ペイ、d払いなど、国内で広く利用されているサービスが利用可能です。
交通系ICカード
ICOCA、Suicaなど、普段使いの交通系ICカードも決済手段として活用できます。
海外向けブランド
Alipay(支付宝)、WeChat Pay(微信支付)など、訪日外国人観光客に馴染みのある決済サービスも導入されています。
特に注目されているのは、万博独自の決済アプリ「EXPO2025デジタルウォレット」です。将来的には、バーチャルキャラクター「ミャクーン!」との連携など、万博体験をより豊かにする機能拡張も期待されています。
若者・外国人は大歓迎?スムーズすぎるキャッシュレス体験
デジタルネイティブ世代や、キャッシュレス決済が浸透している国からの訪日外国人からは、この完全キャッシュレス化を歓迎する声が多く聞かれます。
特に、万博が推奨する「万博ウォレット」アプリのUI(ユーザーインターフェース)は直感的で分かりやすく、多言語対応もされているため、外国人観光客からの評価も上々のようです。
高齢者や一部の来場者からは戸惑いの声も
その一方で、キャッシュレス決済に慣れていない層からは、様々な不満や不安の声が上がっています。
また、スマートフォンを所有していない人や、通信環境に不安を感じる人にとっては、キャッシュレス決済以外の選択肢がないことが大きなハードルとなっています。
実際に使ってみた「万博ウォレット」の使用感
筆者も実際に「万博ウォレット」を体験してみました。アプリのインストール自体は比較的スムーズでしたが、会場内の混雑時には、起動や情報読み込みに若干時間がかかる場面もありました。
チャージ方法は、クレジットカード決済とコンビニエンスストアでの現金支払いが選択可能です。決済自体は、店舗に設置されたQRコードを読み取るか、自身のQRコードを提示するだけで完了し、非常にスムーズでした。
しかし、アプリの動作が不安定になる時間帯や、一部Wi-Fi環境が整っていないエリアでは、決済に手間取ることもありました。バッテリー消費もやや気になるところです。
決済トラブルも?現地で見られた課題
完全キャッシュレス化は、まだ発展途上の段階であり、いくつかの課題も浮き彫りになっています。実際に現地では、以下のようなトラブルも散見されました。
これらのトラブル発生時、スタッフが迅速かつ適切に対応できるかどうかが、来場者の満足度を大きく左右すると言えるでしょう。
キャッシュレス化の恩恵も確かに存在
もちろん、完全キャッシュレス化には多くのメリットも存在します。
・会場内のレジ処理が迅速になり、全体的な待ち時間が短縮されたという声が多く聞かれました
・財布を持ち歩く必要がなくなり、身軽に会場内を移動できるのは大きな利点です。特に小さなお子さん連れの家族にとっては、両手が空くのは嬉しいポイントです
・「万博ウォレット」をはじめとするキャッシュレス決済を利用することで、ポイント還元やクーポン配布などの特典を受けられる場合もあり、お得に万博を楽しむことができます
・現金の受け渡しがないことによる衛生面の向上や、接触機会の減少は、感染症対策としても重要な意味を持ちます
今後に向けた課題と教訓
大阪万博の完全キャッシュレス化は、未来のイベントのあり方を示す上で重要な試金石となります。しかし、その成功のためには、以下の課題に真摯に向き合う必要があります。
・通信障害やシステムトラブル発生時のための、オフライン決済の導入や代替手段の確保が必要です
・会場全体の通信インフラの更なる強化と、トラブル発生時の迅速な復旧体制の整備が急務です
単に「便利だから」という理由だけでなく、すべての来場者がストレスなく万博を楽しめるような、ユーザーに寄り添ったシステム設計と運用が求められています。
まとめ:大阪万博のキャッシュレス化は、まだ発展途上
大阪・関西万博の完全キャッシュレス化は、その先進的な試みにおいて、多くの注目を集めています。若者や海外からの来場者には概ね好評である一方、高齢者やITリテラシーが低い層にとっては、乗り越えるべきハードルも存在します。
現時点では、「未来的で便利」という評価と「誰でも使えるわけではない」という課題が混在していると言えるでしょう。
真のキャッシュレス社会の実現には、利便性だけでなく、すべての人が取り残されない包摂性が不可欠です。
大阪万博の事例は、日本のキャッシュレス推進の未来にとって、貴重な教訓と示唆を与えてくれるでしょう。今後の運用改善に期待しつつ、その動向を注視していきたいと思います。